さて食品集中加工々場の存在意義とは何でしょうか・・・?
外食業を営む企業では自社でセントラルキッチン(CK)を持つところと、
CKを持たず食品メーカーさんを有効に使っていこうとするところに分かれます。
何故なのでしょうか?
両方にその長所と短所があるからと思われます。その点から考えてみましょう。
数十から数百の店舗が、同じ看板で、同じメニューで、同じ雰囲気とサービスでお客様をお迎えするのがチェーンストアですが、その最大の売り物(商品)は何と言ってもお料理ですね。その商品は例え何千店あろうとも、同じ品質と価格であることがお客様への最優先のお約束であるはず。
ところが全ての調理工程を店舗で実施したとすると、全店で同じ品質が保てないであろうことは誰でも容易に想像がつきます。そこでチェーンストア網が大きければ大きい程、品質の大素(モト)であるタレ・ソースやドレッシングなどを1ヶ所で集中加工し、高質かつ均質な食材を供給する必要性が出てくる訳です。
このことは商品の均質化と共に、各店舗での分散作業に比べて、集中化による作業効率のアップ(例えばトマトソースを数十店が手鍋で作るより、CKで大釜で作るほうが断然効率的ということはお分かりですね)という効果も得られます。
さて調理を集中させることの必然性が分かったところで、では自社でCKを持つことと、食品メーカーに外注することの可否はどうなるのでしょうか?
『もの』をつくるということは自社CKであろうと、メーカーであろうと量産する規模でしか基本的なコストの差はつきません。ですから同じ様な量をつくるのであれば、製造原価に利益を乗せて売るメーカー品より、利益追求の不要な自社CK品が上乗せしない利益分、安く店舗へ届けられることになります。
またメーカー頼りだとメニュー変更の制約を受けたり、その企業独自の味を守れなくなる可能性があります。
逆に特に独自の味を出す必要性はなかったり、作るための設備投資が大き過ぎて内製が難しいが、一円でも安いほうがいいという食材は、量産規模の最も大きなメーカーから買うのが一番賢いということになります。
結論を言いますと、少なくとも3桁のチェーンストアを目指す企業であれば、必ず自社CKを所有して、ベストセラー且つロングセラー商品の食材は必ず内製(自社CKで作る)する。
一方短期間でメニュー差し替えしたり、メニューバラエティのために少ない販売数でも外せないというような食材は、外注(外部メーカーから買う)することがベターと考えられます。
そうすると店舗調理と、自社CK内製、そして外注という3つの手段の中から、その商品により適した提供方法の設計が可能となり、マーチャンダイジング力が強化されます。
つまり効果的な商品政策を推進する手段として、店舗調理と外注という2つしか選択支がないのに比べ、自社CKという第3の選択支も加えた企業はより最適組合せの可能性が拡大し、その結果より安く、より高品質で調達する、などのマーチャンダイジングメリットを享受し易くなる訳です。
以上のように自社でセントラルキッチン機能を構築することは、チェーンストアシステムにおけるマーチャンダイジング力の構築と強化そのものである訳です。
さて外食企業CKの存在意義をご理解いただけたでしょうか。
では最後にそのCK活用のメリットとデメリットを列挙してみます。
【メリット】
1.外注品と内製品の内外価格差が企業の収益増をもたらす。
2.原材料や加工段階までも内部管理できるため、外注と比較して品質やコスト面のコントロールが自社の意思で可能かつ容易になる。
3.レシピの配合比や調理方法の社外流出が防止でき、本来の自社オリジナル商品が訴求できる。
4.内製により得られた調理ノウハウや工程管理技術の蓄積により、食材メーカーの工程監視、およびその指導が出来、外注品の品質向上とコスト低減にも発言力を持つ。
5.生産地(メーカー)と店舗(お客様)を結ぶ広義の物流システムが自社で設計でき、ユーザーに対する真の品質保証という「安全・安心」が訴求できるなどです。
物事には必ず表裏があり、生産物流を所有することにも勿論デメリットがあります。
【デメリット】
1.CKでの食品事故発生は、全店レベルでの営業停止リスクを負う。
2.CKは店舗に比べ装置産業的要素が多く、固定的経費部分が増すこととなる。従って一定の稼働率が確保出来ないと全社の収益力ダウンの牽引車になり兼ねない。
3.店舗でのスタンバイ(仕込)を中心とした調理作業が激減するため、何らかの対策がないと、店舗の調理技術レベルダウンは避けられない。またこれに付随する品質管理技術も低下する危険性が高い。
4.本部と店舗とCKの補完関係と役割分担が明確でないと、手続き上のムダ等による組織的ロスが散見される結果となる。
5.マス・ストアーズ・オペレーションと生産物流システムをつなぐ情報システムネットワークが、その規模に応じて機能していないと、必要なものを、必要なだけ、必要な時に配送するという供給体制が確立せず、マス単位の機会損失や品質低下を招く。などが上げられます。
以上考えられるメリットとデメリットを列挙した訳ですが、お読みになってお分かりのように、メリットの部分は更に磨きをかける為により広く、より深く、掘り下げる努力を継続し、その効果を最大化することが重要です。
そしてデメリットの部分はこれを発生させないための、事前の予防的施策が要であり、適時に実施可能な対策を準備しておく必要があります。
CKのマクロレベルの課題は、ここに述べたメリットの実現とデメリットの防止に全力を傾けることにあると云えます。
Yのチョットひと言