工場の数字が見える状態を、現場が続けられる形でつくります。

サービス04「工場運営に伴う情報システム構築」で何をするのか、その中身をまとめました。私たちがお客様の工場で実際に組み立ててきた仕組みを、順を追って書いています。

少し長いページです。気になる節から読んでいただいて構いません。

1こんな状態になっていませんか
2システムから入りません
3物と情報の流れ
4帳票は、3つの単位で出ます
5マスタ — 何を、誰が、いつまでに
6「工場の数字が見える」とは何か
7導入の進め方と、一度で完成させない理由
8導入して、何が変わるか

1 こんな状態になっていませんか

工場をお持ちの企業様から、よくうかがう症状です。左の症状には、右の原因が対応しています。

よくある症状実際に起きていること
製品ごとの本当の原価がつかめない原価の基礎データが揃っていない
数字が後追いでしか出てこない実績を入れる単位が決まっていない
在庫が合わない指示にない製造を止める仕組みが無い
品質の記録が生産とは別に管理されている記録がロット(同じ条件で作った製造のひとまとまり)で結びついていない
商品改定のたびに現場が止まるマスタ登録の逆算日程が無い
人が替わると、品質と速さが変わる標準作業が紙になっていない

どれも、システムが無いから起きているのではありません。決めるべきことが決まっていないまま日々が回っているから起きています。

このページは、その「決めること」の中身です。


2 システムから入りません

何をどう管理するかが決まっていない状態でシステムを入れると、入力だけが増えて、誰も見ない画面ができあがります。これは私たちが何度も見てきた失敗です。

ですから私たちは、原価と予算の考え方を先に設計します。導入は6つのステップで進めますが、そのうち最初の4つは、システムの話ではありません。

STEP内容性質
01マスタの整備(品目・原価・工程などの基礎データ)決めること
02原価管理の仕組みづくり決めること
03予算管理・目標管理のフロー構築決めること
04帳票体系の構築決めること
05システムの構築・導入つくること
06稼働後の保守続けること

決まっていないものは、システムにできません。逆に言えば、01から04が決まっていれば、システムは形になります。


3 物と情報の流れ

生産管理システムは、店舗の発注から工場の実績までを1本の流れでつなぎます。流れは5つに分かれます。

① 受注 — 店舗からの発注を受ける

店舗が発注し、システムが取り込み、人が受注チェックをして、受注が確定します。チェックするのは次の4点です。

  • 発注漏れ
  • 桁違い
  • 締切後・休業日の発注
  • 発注単位の違反

ここを機械任せにすると、桁がひとつ多い発注がそのまま製造計画になります。決めるのは人、繰り返すのはシステムです。店舗別の明細を束ねると、それがそのまま品目別の製造数になります。

受注には、確定したその日のぶんと、先を読む未来のぶんの2つがあります。曜日ごとの出方、販促の予定、季節の要因。この3つを持っておくと、材料の手当てが前倒しでできます。当日のぶんだけを見ていると、いつまでも追いかける発注から抜けられません。

② 計画 — 製造計画から材料を展開する

確定した製造計画に配合マスタ(どの製品に何をどれだけ使うかの表)を掛け合わせ、材料の所要量を計算します。計算そのものは単純です。

合計所要量 − 在庫 = 発注量

大事なのは、たまねぎのように複数の製品で使う材料が、品目をまたいで合算されることです。品目ごとに発注していたものが、工場全体の1つの数字になります。

所要量の計算も、当日のぶんと未来のぶんの2本立てで回します。当日は製造のため、未来は発注のためです。先に決めておくのは、在庫をどこまで持つか、発注の単位、リードタイム(発注してから届くまでの日数)、そして棚卸のタイミングの4つです。

ただし配合マスタが1品目でも欠けていれば、計画は止まります。ここが5節につながります。

③ 製造 — 現場に指示を出す

製造指示書が現場に出ます。そしてもう1枚、品質保証カードがロットごとに出ます。これは原料の配合表と、加工工程ごとの管理基準を1枚にしたもので、CCP(重要管理点=ここを外すと安全が担保できない工程)を明示しています。

このカードは1枚で5つの役目を果たします。

  • 着工の権利 — カードが無ければ、そのロットは作れません
  • 作業指示 — 配合と工程がその場にあります
  • 教育 — 新しい人でも、カードのとおりに作れます
  • 記録 — 測った値をその場で書き込めば、HACCP(食品衛生の管理手法)の記録になります
  • トレーサビリティ — ロットから原料まで遡れます

カードは工程とともに移動し、最後に回収されます。カードを勝手に作れないことが、在庫と原価が合う前提になっています。

④ 配送 — 積んで、届けるまで

ピッキングリスト(庫内で商品を拾い集めるための一覧)は、店別に、冷蔵・冷凍・常温のエリア別、棚別、棚の中の置き順まで並べて出します。この並び順が、そのまま倉庫を歩く順番になります。

ここで前提になるのが定位置です。どの商品がどの棚のどこに置かれるかが決まっていないと、並び順が計算できません。「棚を片付けましょう」ではなく、「片付けないと、リストが出ません」と申し上げているのはそのためです。

⑤ 実績 — 入れた数字が、ラインの成績になる

実績を入れる目的は、集計ではありません。評価です。見るのは2つの差です。

  • 原価の理論差 — 配合どおりに作った場合の原価と、実際にかかった原価の差
  • 標準時間と実績時間の差 — 計画した時間と、実際にかかった時間の差

週報には、この2つの差のほかに、人時生産高(1人1時間あたりいくら作ったか)、材料比率、主要品目の歩留を並べます。日別に並べると、特定の曜日だけ数字が落ちていることがはっきり出ます。そこに定性的な気づきを書き添える欄を設けておくと、翌週の打ち手につながります。

ここで申し上げたいことが1つあります。標準時間は、下回ってはいけません。下回ったということは、標準の決め方が甘いか、工程を飛ばしているかのどちらかです。差が出ること自体が悪いのではなく、差が見えないことが問題なのです。


4 帳票は、3つの単位で出ます

ここは実務の話です。帳票がどの単位で出るかを決めないと、システムは設計できません。私たちは3つの粒度を使い分けています。

帳票出る単位
製造指示書小ライン × 1日(その日の製造一覧)
品質保証カード小ライン × ロット(一品一葉。同じ製品を1日3回作れば3枚)
ピッキングリスト店 × エリア × 棚 × 棚内の置き順

そして製造ラインのマスタは階層で持ちます。「ソースライン」という大きなくくりの中に、実際の作業単位である小ラインがあるなら、小ラインまで定義します。製造指示書も品質保証カードも小ライン単位で出るためです。

機能の一覧を並べた資料はどこにでもありますが、帳票がどの単位で出るかまで書いた資料は、まずありません。ここが決まっていないまま開発に入ると、あとから作り直しになります。


5 マスタ — 何を、誰が、いつまでに

マスタ(品目や取引先などの基礎データ)は、工場系17本と店舗系5本の合わせて22本を設計します。品目、配合、製造ライン、工程、標準時間、原価、取引先、ピッキングロケーション、店舗、配送コース──こうしたものが1本ずつ独立して存在します。

本数を挙げるのは、深さを自慢するためではありません。22本を誰が維持するかを決めないと、システムは動かないからです。

誰が作るのか

商品開発、仕入部門、商品部門、工場、製品開発。マスタは1つの部門では作れません。配合は商品開発、仕入単価は仕入部門、標準時間は工場、というように分担が分かれます。ここを決めずに導入すると、「誰も更新しないマスタ」が必ず生まれます。

いつまでに登録するのか

商品改定(メニュー改定)のたびに現場が止まるのは、登録の期日が決まっていないからです。私たちは改定日から逆算した日程を、店舗・マスタ・工場の3つのレーンで1本の時間軸に載せます。

原則は3つです。

  • 起点は先行店に置く(全店改定ではなく、先に切り替える店を基準にする)
  • 前日までに、全マスタの登録を完了させる
  • 日程には余裕を持たせる(1日でも遅れると、初回の配送が出せません)

何を(22本)、誰が(部門の分担)、いつまでに(逆算日程)。この3つが揃って、はじめてマスタの話が終わります。


6 「工場の数字が見える」とは何か

ここが目的地です。原価の話は3段あります。結果、積み上げ方、使い道の3つで、はじめて原価が完結します。

その前に — 受払管理

原価の前に、在庫が合っている必要があります。計算そのものは単純で、前日在庫 + 入庫 − 出庫 = 当日在庫です。これを品目ごとに毎日回します。

この式で出るのが理論在庫です。棚卸で数えた実在庫との差が、品目別に見えるようになります。差をゼロにすることが目的ではありません。差が見えることが目的です。差の出る品目は決まっていて、たいていは計量の癖か、記録されていない廃棄か、指示にない製造のどれかです。

① 品目別原価 — 結果

品目ごとの製造原価明細を、直接費5項目(材料費・労務費・水光熱費・設備費・営業費)と間接費4項目に分けて出します。そこに現在の販売価格を並べ、価格差まで出します。

この表を作ると、たいてい数品目が赤字で出てきます。丼勘定で値決めをしていた品目が、数字で見えるようになるということです。

もう1つ見るのが、理論原価と実際原価の差異です。配合どおりに作ればこうなるはず、という数字と、実際にかかった数字の差。差が大きい品目は、配合が守られていないか、歩留が想定と違うか、標準そのものが古いかのどれかです。品目を名指しできるので、改善の的が絞れます。

② どう積み上げるのか — 配賦の設計

原価は、測って積み上げます。工程ごとに正味時間(手作業の時間+歩行の時間)、場所の占有、設備の占有を実測し、設備費は分単価まで落とします。

そのうえで配賦(共通の費用を各部門・各品目に割り振ること)の基準を2段で決めます。間接費を製造と配送へ割り振る基準が1段目、ラインから品目へ割り振る基準が2段目です。

配賦の基準を決めることは、経理の作業ではありません。工場の数字をどう見るかという設計です。

③ 何に使うのか — 予算と改善

出した原価には、3つの使い道があります。

ひとつ、来期の予算を組む。直近月の原価合計をそのまま来期の単価にすれば、価格差はゼロになり、工場の損益予算が±0で組めます。そこに生産性の目標があるなら、原価合計より単価を下げる。すると予算がそのまま改善目標になります。

ふたつ、改善の効果を確かめる。ある工程を機械化すれば、人件費が下がって設備費が上がるはずです。そうならなければ、どこかに異常があります。原価表は、自分自身の妥当性も点検してくれます。

みっつ、配送費は品目ではなく店に載せる。配送の費用は出荷高の比率で店に配分します。品目に載せてしまうと、遠い店に多く出た月だけ原価が上がることになり、製造の実力が見えなくなります。


7 導入の進め方と、一度で完成させない理由

私たちは2段構えで進めます。

第1段階。まず立ち上げて、1年回します。実際に使うと、必ずズレが出ます。現場の動きと設計が合わない箇所、想定していなかった例外、要らなかった項目。それを1年かけて直します。

第2段階。固まった業務をそのまま写して、堅牢なシステムに作り直します。

一度で完成させようとすると、決めきれていない仕様を紙の上で埋めることになります。埋めた仕様は現場で合わず、稼働後に大きな改修が発生します。これは妥協ではありません。設計の順番です。

なお第1段階も、現場が実際に使って数字が出るものです。1年お待ちいただくわけではありません。


8 導入して、何が変わるか

  • 業務フローが整理できる — 決めることを決める過程が、そのまま整理になります
  • 品目ごとの本当の原価が出る — 値決めの根拠ができます
  • 在庫が合い、作りすぎと欠品が減る — 理論在庫と実在庫の差が見えます
  • 品質の記録が、そのまま残る — 品質保証カードがHACCPの記録を兼ねます
  • 教育にかかる時間が減る — 標準がカードと帳票の形で現場にあります
  • 本番システムへの移行がスムーズになる — 1年回した業務を写すだけで済みます

自社工場は、安心安全のため、品質の維持・向上のため、内製化の推進のため、原価低減のため、そして人財育成のためにあります。この5つはどれも、数値化と標準化を土台にしています。生産管理システムは、その土台を形にするための道具です。


ご相談ください

「どこから手を付ければいいか分からない」という段階で結構です。いま何が決まっていて、何が決まっていないのかを整理するところから、ご一緒します。初回のご相談は無料です。